日本市場における「フードテック(Food Tech)」の可能性を考える

日本市場における「フードテック(Food Tech)」の可能性

2020年7月に『フードテック革命 世界700兆円の新産業「食」の進化と再定義』という書籍が販売され、日本でも一躍注目されはじめた「フードテック」という言葉。

この本は、発売から半年後の今(※2021年1月現在)でもamazonの食品産業研究カテゴリのベストセラー1位で、食が本業でないマーケターたちの間でも話題となっています。

世界的にはもっと前から騒がれていたようですが、この「フードテック」という言葉が意味する範囲があまりにも広すぎるので、動向をきちんと把握するのに少し時間がかかりました。

この記事では、世界的なトレンドである「フードテック」について分解して整理し、日本市場ではどのような可能性があるのかを僕なりに分析してみます。

「フードテック(Food Tech)」とは

「フードテック(Food Tech)」とは、〝テクノロジー(Tech)を使って、食べ物や食事のあり方(Food)をアップデートすること〟です。

ただ、これだけでは意味が広すぎてとりとめがないですよね・・・。

分解して考えると、「フードテック」という言葉が意味する内容は、次の2つに大別することができます。

  • ① 食べ物そのもののアップデート
  • ② 食べ物以外(調理器具、流通、販売方法)のアップデート

先に②を説明します。

例えば、UberEats(toC)やドローン配送(toB・toC)のように食の流通に関することや、無人コンビニのような食の販売のあり方、スマホアプリと連携した自動調理器など料理の効率化に関することなどが、②に当たります。

これらのアップデートは、「食」に限らずあらゆるジャンルで進行していることです。

ですので、ここではこれ以上は深掘りしないでおきます。

特筆すべきは、①の方。

フードテック革命』に書かれているように、動物に依存しない植物由来の肉や卵、スイーツなどの開発が相次いでいます。

なぜこのようなトレンドになっているかというと、その背景には以下3つの事情があると推定できます。

【1】社会的なサステナビリエティ志向
【2】宗教的なオーガニック志向
【3】個人的な健康志向

どういうことか。

それぞれざっくりと以下で説明してみます。

【1】社会的なサステナビリエティ志向

まずは【1】。

世界的な人口増加により、今後、現状の畜産では全人類の胃袋を満たすのが難しくなってくる、という懸念です。

肉や卵は想像が容易ですが、例えばアイスクリームに使われる乳成分も牛から搾取されていますよね・・。

現状の畜産に頼っていては、近い将来食糧不足が起こると予想されます。そのため、オルタナティブな生産方法を考えなければいけないよね、という人類視点での(ある種マザー・テレサ的な)問題意識です。

【2】宗教的なオーガニック志向

【2】は、ヴィーガン(完全菜食主義者)や、豚肉を食べることのできないムスリムなどへの配慮。

たとえばスイーツ市場では、アメリカではヴィーガンフレンドリーの文脈でマシュマロ(例:DANIES Vegan Marshmallows)やアイスクリーム(例:BRAVE ROBOT)などが開発され、市場が活気付いています。

ヴィーガンフレンドリーなアイスクリーム『BRAVE ROBOT』(出典:braverobot.co

はっきりと宗教の意識をもっていなくても、動物由来の食事に「NO!」をつきつける強い信念をもっている人たちに向けた市場の創造です。

テクノロジーの進化により、植物由来の肉や卵、アイスクリームなどをつくることが可能となり、それまで肉や卵を食べられなかった人が口にできる〝類似肉〟などが次々と生み出されています。

【3】個人的な健康志向

最後は説明するまでもないかと思います。

少しだけ深掘りしてなぜこれほど健康志向の世の中になっているかを考えてみると、その根底ではテクノロジーの進化が大きく関係していると思われます。

生存への欲求は人間に限らずあらゆる生物に共通していますが、テクノロジーが未熟な段階では「何をしたら(逆にしなければ)健康に長生きできるのか」が曖昧でした

テクノロジーや科学の進化により長生きするための〝正解〟が具体的に明らかになりつつある社会では、個人はさまざまな方法で健康を志すようになります。

テクノロジーや科学は日々アップデートされますから、健康の解像度が時代を経るに連れ高まっていき、それにより市場が活気付いていると解釈しています。

日本市場における「フードテック(Food Tech)」の可能性

さて、上で述べてきたことを整理すると、下の図のように可視化することができます。

以下では「食べ物のアップデート」に絞り、日本市場の可能性を抽象的に考えてみようと思います。

現在、日本市場でフードテックの可能性があるのは、赤で記した「個人的な健康志向」の文脈です。

上で述べたようにテクノロジーがさらに発達し、より高精度に健康を定義or測定できるようになってくると、さらに健康への意識が強まっていくように思います。

(テクノロジーの進化が止まらない限り、健康志向に歯止めがかかることはまずないと踏んでいます)

では、日本においてフードテックの需要が「宗教的なオーガニック志向」「社会的なサステナビリティ志向」に展開していく可能性は果たしてあるのか・・・。

ここを考えてみます。

まず、「社会的なサステナビリティ志向」にむかう可能性はほとんどないんじゃないかなと思います。

というのは、この志向は人口増加による食料不足を前提としているからです。

日本は年々人口が減少しているわけですから、少なくともこの先5~10年を考えると、ここに大きな市場トレンドができるとは予想しにくい。

そして、「宗教的なオーガニック志向」についても、これは文化の生得的な精神基盤なので、この意識がトレンドによって後天的に芽生えてくるとは考えにくいです。

そうなると、やはり「個人的な健康志向」に回帰してしまうのですが、今後、〝健康〟を具体的に定義したプロダクトへの需要がより一層強まってくるのではないかなと思います。

現在日本のフードテック企業として真っ先に名前が挙がる『BASE FOOD(ベースフード)』では、「厚生労働省が推奨する栄養素等表示基準値」に即して、1日に必要な栄養素がすべて摂取できるパン(BASE BREAD)とパスタ(BASE PASTA)を販売しています。

BASE BREAD(出典:amazon
(出典:BASE FOOD

要は、そのプロダクトが健康といえる科学的な根拠はなにか、が大切ということです。

やっぱりこの文脈でしか日本市場で戦うには厳しいのではないかと思います。

具体性のない思考を書き綴ってしまいましたが、現時点ではその結論です。

僕は本職はお菓子メーカーなので、フードテックの文脈で市場にプロダクトを出すとしたら、現状、やはり機能性を全面に押し出したマーケティングが必要だろうと考えています。

引き続き、国内のフードテック市場の動向を追いつつ、なにかアイディアがあれば自分でも商品開発に着手してみようと思います。

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